東京地方裁判所 昭和35年(ワ)4473号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と争点〕本件は被告広木の運転する貨物自動車が雨中の千葉街道で停車中のバスを追越そうとして中央線より右方に出たとき、反対方向から進行して来た原告操縦の自動車と衝突した事案である。
判示事項一について、原告は被告城川は協立組の称号で自動車による貨物運送業を営み、被告広川を運転者として雇傭し、貨物運送に従事していた旨を主張し、被告城川にたいし自賠法第三条による責任を追及した。
判決は被告広木を雇つて運送業を営んでいたものは株式会社共立組であり、被告城川はその代表者であると認定したが、当時右会社は自動車を一台も所有せず、被告城川その他から自動車を借りて右事業を営んでいた等の特殊の事情を認定し、被告城川に同条による損害賠償責任を認めた。判示事項第一、第二の各事項につき、判決はつぎのとおり説明している。
〔判決理由〕被告城川建一は株式会社共立組の代表取締役で、同会社は一般貨物の運送に関する事業およびこれに関する代理業を目的とする資本金二五万円の株式会社であるが、会社所有の自動車は存せず、前記事故の発生当時は、被告城川建一所有の自動車を同人から借り入れ同会社において傭い入れた運転者である被告広木喬をこれに配してその運行に従事させていたほか、他に二台の自動車をその運転者とともに他から借り入れ営業をなしていたに過ぎず、被告城川建一は同会社代表取締役であるとともにその所有自動車を同会社に賃貸して専らその営業用に使用させ賃貸料として一月金五六、〇〇〇円を得ていたこと、を認めることが出来、右事実によれば被告人城川建一と同広木喬との間には直接の雇傭関係はないものと認められ、被告等の前記自白は真実に反することは明らかであつて、これが錯誤に出たものであることは推認するに難くないところであるから右自白の撤回は許されるべきものといわなければならない。然しながら、右認定の事実関係によれば、被告城川建一は前記所有自動車を株式会社協立組に賃貸し専らその営業用に使用させていたものであるから、同被告はこれを自己のため運行の用に供したものというに妨げなく、被告広木喬が右自動車を運行中惹起した前記事故に対して損害賠償の責に任ずべきは勿論といわなければならない。
およそ自動車の運転に従事する者は雨中停止しているバスを追越そうとするような場合には、路面が濡れていてスリツプし易い状態にあり、バスが何時発進するかもわからないのであるから、速度を減じバスの動向を注視しこれと十分な間隔を保つてその右方を通過するよう、危険の発生を未然に防止すべき注意義務があることは勿論というべきところ、被告広木喬は前記バスの停車しているのを発見しながら事茲に出でず、漫然と進行を続け、これに接近してはじめてその発進するに気付き慌てて急ブレーキを掛け急激にハンドルを左転し車をスリツプするに至らせたものであるから、右事故の発生は同被告の過失に基づくものであることは明らかである。(江尻美雄一)